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ディスカス
ブラジルのアマゾン川支流に生息するシクリッド。
原生地はアマゾン川の支流で、豊かな森林に囲まれたブラックウォーター。
雨季には大量の雨が降り、透明度が高く貧栄養だが、植物から染み出すタンニンやフミン酸によって黒く色づいている。
名前はディスク(円盤)が由来で、縦に扁平で成熟すると尾びれや腹ビレが伸びて円盤状になる。
原種の代表的なカラーはグリーン、ブルー、ブラウンの3色。多くの場合横方向に9本ほどの黒いバンド模様が入る。
円盤状の体型と、美しい色彩、飼育難易度の高さ、ブリードも可能など愛好家に愛される要素を備えている。これらの条件から「熱帯魚の王様」と呼ばれる。
2011年に行われた遺伝子による調査によると大元はグリーンで、そこから東アマゾンのブラウン、プルス川のブルー、さらにはシングー川の3パターンが存在することが判明した。
東南アジアでブリードされる改良品種はこれらの種が掛け合わされて作られており、遺伝的に特定は困難。
稚魚のうちは色彩は乏しく、バンドも不鮮明で、体高も出ず一般的な稚魚と変わらない体型をしている。
成長するにつれて多くの特徴が出てくる。
かつては愛好家たちのトライアンドエラーによって支えられた飼育理論も科学的な検証が進み功罪が判明してきている。
Photo
データ
学名 | Symphysodon aequifasciatus (Pellegrin, 1904) | |
英名 | blue discus, brown discus, green discus | |
分類 | ベラ亜(Labroidei)目、カワスズメ(シクリッド)(Cichlidae)科、ディスカス(Symphysodon)属 | |
通称 | ブルー・ディスカス、ブラウン・ディスカス、グリーン・ディスカス | |
分布 | ブラジルアマゾン川の支流・プルス川、シングー川など | |
最大体長 | 15cm(特に大型の個体で23cmという記録もある) | |
寿命 | 7~10年 | |
餌 | ディスカスのエサは愛好家の間でも長い間議論の的だった。 一般的にワイルドもののディスカスは人工飼料に餌付きにくく、1日に何度も餌を与えなければ痩せてしまうことが多かった。そこで嗜好性と栄養価を兼ね備えたディスカスハンバーグ?が開発された。配合に違いこそあれ、牛や豚の肉(レバーや心臓)をミンチにして丸めたもので、ディスカス愛好家によって様々なレシピが作られた。 ディスカスハンバーグ?の登場によって多くの個体が餓死を免れた。その成功例から、長い間、ディスカスは肉食性の強い種と考えられていた。 ところが近年、原生地で胃の内容物を調べる大規模な調査を行った結果、実は植物性の強いタイプということが判明した。具体的には、77%が植物やその腐敗片、8%が木片や樹皮・水性昆虫・、5%がエビやカニ、10%がユスリカの幼虫というものだった。 雨季と乾季によって食性に誤差はあるものの、概ね植物性が強いことが判明した。 この事実から飼育下の常識であったディスカスハンバーグ?やアカムシなどの生き餌だけを与えるのはディスカスにとって不自然な行為ということがわかった。 ディスカスハンバーグや生き餌には病原体が存在しており、それらの免疫を持たない魚にとっては腸内環境に深刻なダメージを与える可能性がある。特に牛や豚の心臓といった家畜の内臓は深刻なダメージを与えている可能性がある。 またこうした肉類は水質の悪化を招きやすく、水質の変化に弱いディスカスにとって諸刃の剣と言える。結果として毎日大量の水を交換するという手間もかかる。 幼魚のうちからディスカスハンバーグ?を十分に与えた個体は、ワイルドものと比べ1.5倍ほどの大きさに成長する点も、この偏った食生活にあると考えられている。草食動物の牛にコーンを与えて早く太らせる肥育方法と似ている。 以上の点から、ディスカス本来の状態を維持するには植物性のエサが最適。具体的にはスピルリナ、ほうれん草、えんどう豆(グリーンピース)、エビ、アカムシ、ミズミミズといったものを練り込んでハンバーグ状にして与える。特にえんどう豆は高タンパクでディスカスのエサに向いているとのこと。(ハンバーグという名前から塩やにんにくなどを添加するレシピも存在するが全く必要ない) 水質の悪化を防ぐには30秒以内に食べ尽くす量を複数回に分けて与えるほうが良い。 | |
適性な水質 | 温度 | 25~32℃ |
PH | 5.2~7.7 | |
硬度 | 非常な軟水~軟水:~6° | |
飼育難易度 | 難しい 45cm以上の水槽を用意し、餌に関する知識を正しく持って高頻度に与えることができ、水質に関する知識を持ち、エサの食べ残しの掃除や高頻度の水換えが必要。特殊なエサだけでなく、大型水槽を維持するには相応のコストがかかる。以上の条件を満たすだけの十分な知識と労力を避けるなら飼育は可能。現代では多くの愛好家の手によって正しい飼育方法が確立されている。 | |
繁殖難易度 | 普通 原生地では雨季になるとオスメスのペアになり繁殖行動に出る。現地での雨季である5~6月に雨量の増加により、ジャングルに蓄積されたフミン酸やタンニンなどの成分が川に流れてくる。この黒くて透明度の高い水は雨水に近く、貧栄養でミネラルなどが極端に少ない。このときのpHは5.1まで下がる。またこの時期は餌となる植物も増える。 これらの状況を水槽で再現することが産卵のトリガーになる。アク抜きをしていない流木やマジックリーフ、やしゃぶしの実やピートなどを用いてブラックウォーターを模してpHを下げる。(原生地の環境から考えるとリン酸やRO浄水器を用いたpHの調整は誤り) また、雨季のアマゾン川は水温が22℃程度まで下降するため、水温を多少下げるのも良い。 さらにディスカスハンバーグ?など栄養価の高い餌を十分に与える。 以上の条件が整えば、オスメスのペアができあがる。 産卵は流木に垂直に産み付ける習性がある。水槽内ではディスカス専用の産卵床が販売されているのでそれを用いるのが容易。黄色い数ミリ程度の卵で数十から多いときで300ほどの卵を産み付ける。30℃で2~3日で孵化し、7日程度でヨークサックを消費して自由遊泳を開始する。親魚は卵と稚魚を守る。自由遊泳するまでの間は卵に水を送ったり、稚魚を咥えてばらばらにならないようにしたりと甲斐甲斐しく世話をする。自由遊泳するようになると親魚の体からディスカスミルクと呼ばれる物質を分泌して稚魚の餌にする。ミルクと名付けられているがオスも分泌する。この間、稚魚は親魚の体にまとわりつくようになる。このときの親魚は非常に攻撃的になり、稚魚や卵に近づく個体に容赦ない攻撃を仕掛ける。ペアであっても攻撃される可能性があるため、様子を見て卵を守る個体だけを残して隔離する。 その後1周間ほどでブラインシュリンプを食べるようになる。ここまでくれば親魚と同じエサを食べるようになる。 | |
オスメスの見分け方 | オス | 見分けるのは困難。繁殖期には生殖突起がとがる |
メス | 見分けるのは困難 | |
水槽内で好む高さ | 中層 | |
混泳での注意点 | 気性:攻撃的になることがある:繁殖期や同種間など限られた条件で攻撃的になることがある。ディスカス専用の環境を用意することを考えると同種で6匹程度の群泳が飼育しやすい。 | |
気をつけたい病気 | - | |
推奨されるアクセサリなど | 掃除しやすいレイアウト、ベアタンク、ブラックウォーター作る流木やマジックリーフなど、ディスカス専用の産卵床、残有酸素料を増やす装置 | |
避けたほうがよいもの | サンゴ砂、ソイルなど水をアルカリ性へ傾かせるもの | |
60cm水槽での適正な飼育数*1 | 最低でも高さが45cmほど必要なため60cm規格水槽では飼育できない。 |
特徴・飼育上の注意
体高が高く20cmにもなることがあるため、水槽の高さが最低でも45cmは欲しい。複数匹で混泳して終生飼育する場合は120×45×45以上の水槽が理想。
上記にある通り、原生地の貧栄養で弱酸性のブラックウォーターを再現することが水質管理のコツ。
もともとディスカスは草食性で清涼な水質で生息しているため、肉食のエサが発生させる病原体に対して免疫を持たない。
動物性の高いエサを与えている場合は、水質が急速に悪化するため2~3日に一度30%程度の水換えを行う。食べ残しや糞などの除去は毎日行う。
養殖場では早く成長させるため高栄養のハンバーグを与えるため、毎日ほとんど全量の水を変えている。
オーバーフロー水槽で大型の濾過槽を備えている場合は水換えの頻度は下がる。(それでも他の熱帯魚に比べて多めの水換えは必要)
餌の種類や与え方で水換えの頻度を減らすことは可能だが、そもそも水換えを手間に感じる人が手を出す魚ではない。
飼育者の声
■「どんな環境(水槽)で飼ったか。どんな魚と混泳できたか。こんな面白い発見があった。」など実際に飼育してみて気がついたことを投稿してください。上記データとの相違点がありましたら指摘して下さい。
*1 単純な式で求めているので、必ずしも適正でない場合もあります。55リットル/最大体長(cm)×3(冷凍飼料など水を汚す魚の場合×2。テリトリーが必要な魚や肉食魚は×1)の式に当てはめて計算しています